バイクのベーストレーニング

トライアスリートのベーストレーニングについて

冬のこの時期はトライアスリートはもちろん、サイクリストもオフシーズンに入っていると思います。

 

そして多くの方がいわゆる「ベース期」であり、ベーストレーニングを行っているかと思います。

 

 

 

 

ではベーストレーニングとはなんなのでしょうか?

 

意外とベース期にどのようなトレーニングを行っていくべきなのか分かっている方は少ないのではないでしょうか?

 

 

という事で今日はベーストレーニングとは何なのかという事からお話していきたいと思います。


ベーストレーニングとは

ベースとは日本語で基礎になります。つまりベーストレーニングとは文字通り基礎トレーニングを行うという事です。

 

 

では基礎とはなんなのか?

 

 

持久系のスポーツのパフォーマンスを決定つける要素は様々な能力の組み合わせで決まることがほとんどですが、その組み合わせる能力を構成している要素と考えると、持久系スポーツの基礎が見えてきます。

 

 

 

一つ例を挙げると「パワー」

 

パワーと聞くとただ単純に「力」と認識してしまう方も多いと思いますが、POWER(パワー)とは仕事量を表します。

 

 

私達日本人がパワー=力と認識してしまいがちですが、力=FORCEです。そしてパワーとはこの力(FORCE)×スピード(物を動かす速さ)の事です。

 

 

バイクでパワーメーターを使用している方は分かると思いますが、Wは強い力をかけて、ペダルを強く踏み込めば上がっていきますが、同じギアでもケイデンスを上げて、スピード(ペダルを回す速さ)を上げていくことでもパワー(w)は上がっていきます。

 

 

つまりパワーはスピードを上げる事でも上がりますし、力をかける事でも上がります。

 

 

 

 

なので高いパワー(w)を出そうと思ったら重たいギアを早く回せばいいのです。当たり前ですが(笑)

 

 

高いパワーを出すという事は力とスピードの掛け合わせなのです。言わば応用能力です。つまりこの二つの能力がそれぞれ低ければ、掛け合わせたパワーも当然低くなります。

 

 

基礎的な能力が低ければ応用的な能力も低くなってしまうので、それぞれの能力を高めていく必要があるのです。

 

しかし全員が同じトレーニングを必要とするわけではありません。例えば同じ200wでもケイデンスが70がちょうどいい人と110がちょうどいい人では同じ200wを出していても、出し方が違います。

 

 

前者をA選手とすると、A選手は高いトルク(FORCE=力)をかけてパワーを出していますし、後者、B選手はより高いスピード(ペダルを回す速度)を出してパワーを出しています。

A選手はもう少しスピード能力をあげて、トルクは同じでもケイデンスがあがればトータルの指標であるパワーはあがります。B選手は逆にケイデンスは同じでもトルクをかける、つまり一段でも二段でも重たいギアを回せるようになれば、パワーはあがります。

 

 

 

つまり、この二人の選手はトータルの能力は同じでも構成していく基礎能力が違い、課題もそれぞれ違います。

 

A選手はもともと筋力があると考えられるので、ベース期では筋力を強くするトレーニングよりもペダルを早く回すペダリングのテクニックのトレーニングをより重視する必要があり、B選手は当然筋力の強くするトレーニングが必要になります。

 

 

 テクニックや筋力が改善してより高いパワーを出せる基礎が身についても、それを長く保てなくては意味がありません。

そのため、筋力、テクニックと同時に基礎的な持久力も鍛えなくてはいけません。

 

今回はこのベース期においての持久力のトレーニングの行い方、目的などを詳しく説明していきます。

 

 

 

 

 

ベース期の持久力トレーニング

ベース期の間に強固なエアロビックベースを築いておくことが、目標とするレースに向けた強化トレーニングのトレーニングをより効果的に行うのに必要不可欠になってきます。

 

この強固なエアロビックベースをしっかり築き上げるということに、ショートディスタンスをメインとする選手も、ロングをメインとする選手も違いはありません。

 

どの距離においても持久力は必要不可欠だからです。

 

 

当然ショートの選手はレース時にかなり早いスピードを維持しないといけないので、強化プログラムではより強度が高い持久系のトレーニングを行います。ショートの距離ではZ3~Z4の間で競技を行う事が多いと言われています。

 

これはFTPで考えると、80%から95%程度になると考えられます。

 

そのため、トレーニングでもこの強度をシュミレーションしたFTPやLTといった強度をはるかに超えたトレーニングを必要とします。

 

 

ロングの場合であれば、レースが180kmあるので、この180kmを乗り切るためのトレーニングであったり、その時間脚を回し続けてランに足を残すためのペーシングの技術も必要になってきます。

また強度としてはほぼZ2になるでしょう。場合によってはZ3の下限に近い所での走行になることが多いと思います。

 

 

このようにレースの距離によって求められる強度ゾーンは違うのですが、有酸素能力の指標ともなるFTPを向上させていくことはどの距離を行うかにかかわらずとても重要になってきます。

 

 

 

 

仮に、アイアンマンで目標の順位を取るには200w程度でアイアンマンのバイクパートをこなせないといけないとします。

 

 

FTPが200wしかなければ、どんだけ頑張っても1時間しかこの目標タイムでゴールするペースで走れません。

FTPが300wの人にとっては65%FTPの強度になるので、ほぼZ1。つまりリカバリーペースになります。

 

 

FTP300wの選手が4~5時間のロングライドを行っていなければ、ポテンシャル的にはペースに余裕があっても、完走できなかったり上手く力が出せない可能性は0ではありませんが、FTPが200wの選手には100%不可能です。

 

 

もちろんFTPが低くても、かなり長い時間FTPより下ではあるが、FTPに近いゾーンで走れる選手もいるかもしれませんが、やはりこの選手がFTPを伸ばせが、レースでのタイムの短縮も見込みやすくなります。

 

 

どのトレーニングブロックでもこの持久力のトレーニングは必要になってきますが、このベース期にじっくり取り組むのがよいシーズンを過ごすための大きな鍵になってきます。

 

 

 

 

持久力トレーニングの方法

ベース期にどのような目的をもってトレーニングをしていけばいいかが分かってきたかと思いますが、では持久力を鍛えていく為にはどのようなトレーニングが必要なのでしょうか。

 

 

 

恐らく多くの方が、持久力のトレーニング、特にベース期というとロングライドを思い浮かべるのではないでしょうか?

 

もちろんロングライドは基礎的な持久力を鍛えるのにとても有効なトレーニングです。

 

低い強度、完全なエアロビックなゾーンで長時間走ることで、筋肉内のミトコンドリアを増やし、また体の隅々まで毛細血管を張り巡らせることで、多くの血液を送れるようになり、また脂肪をエネルギー源として体を動かす脂肪代謝の能力も向上します。

 

 

そして運動強度が低いので、ある程度疲れていてもこなす事ができるので、トレーニングに失敗することがほぼありません。

 

 

 

しかし効果を得るには長時間のトレーニングが必要になってきます。

 

いわゆるプロと呼ばれるフルタイムアスリートの場合は、トレーニングボリュームを稼ぐこの時期は1週間に30-40時間ものトレーニングを積みます。

 

 

これだけトレーニングに割ける時間があれば、毎日4~5時間のロングライドを行いトレーニング効果を引き出す事が可能になりますが、普段お仕事を抱えている方にはまず不可能なトレーニングになります。

 

 

 

週末に頻繁にロングライドに行く方もおられるかと思いますが、週に10~15時間のトレーニングの内、5時間ものロングライドを行ってしまうとトレーニング時間の割り振り方としてはかなりもったいないです。

 

 

そのため、出来るだけ時間をかけず、効率よく有酸素システムを鍛えていく必要があるのですが、一体どうすればいいのか。

 

 

 

 

 

 

 

とても簡単で強度を上げてしまえばいいのです。ただ、強度を上げるからと言って闇雲にハードに踏むわけではありません。

 

 

 

あくまで有酸素ゾーンの中での高強度です。高強度短時間トレーニングがいいらしいと聞いて、本当に高い強度のトレーニングを多く行ってしまっている方も見かけたりしますが、このトレーニングでも有酸素システムに刺激を入れることは可能ですがそもそもボリュームを稼げません。

 

 

 

この時期に持久力を伸ばすには、時間がないとしてもできるだけ多くの時間有酸素システムに負荷をかけていくことが必要になってきます。

 

 

基本的には有酸素能力の上限である閾値以下でのトレーニングを行っていきます。

 

閾値できっかり有酸素運動と無酸素運動が切り替わるわけではありませんが、有酸素ゾーンと無酸素ゾーンの切り替わるポイントで、先ほどから文中に出てくるFTPもこの閾値の指標になります。LTとは乳酸値を参考にした閾値で乳酸値が2mmolと4mmolで乳酸の上昇比率が変わるのでこの値を乳酸閾値、LTと呼びます。FTPはほぼ4mmolに近い強度になります。

 

 

有酸素システムはこの閾値以下で刺激を加えることが出来るので、自分のトレーニング時間にあわせて、継続できるゾーンでトレーニングしていくことで効率的なトレーニングを行うことが出来ます。

 

 

例えば1時間しか時間がとれないのであれば、出来るだけ閾値に近い、いわゆるFTPゾーン(Z4)でのロングインターバルを行うといいでしょう。FTPは1時間に出せる最大パワーなので、疲労などなく絶好調であればそのパワー(ペース)で理論的には1時間走行できるとされています。

 

ただ恐ろしいほどきついので頻繁にその強度でこの時間のトレーニングは行えません。一般的には5~20分のトレーニングを5~10分程度レストを取りながら繰り返して行います。

 

 

しかしこの短い時間に分割する方法でも体にかなりストレスはかかります。

 

 

そこで多く行われているトレーニングとしてSST(スイートスポットトレーニング)と呼ばれるものがあります。100%FTPではなく、この少しした、FTPの90%前後での強度でインターバルを行っていきます。

 

Figure courtesy of Dr. Andy Coggan, Ph.D
Figure courtesy of Dr. Andy Coggan, Ph.D

上の図はトレーニング効果(trainig effect)、身体へのストレス(Phisiologicap strain)、トレーニングが可能な持続時間(Maximum duration)の曲線を表しています。

 

 

横軸は運動強度を表しています。右側に行くにつれ強度が上がっていくのですが、Phisiologicap strainはL4、100%FTPを上昇カーブが強くなっているのが分かるかと思います。

 

これはいわゆるOBLAと呼ばれるポイントで(4MMol)この強度を超えると急激に乳酸がたまり始めます。そのため、身体へのストレスもこの値を境に急激に上昇します。

 

 

 

Maximum durationは持続可能な運動時間を示していますが、これは左から徐々に下がっていきます。考えてみれば当たり前のことですが、運動強度を上げていけば、その分きつくなり、運動を続けられなくなりますよね。

 

 

トレーニング強度が低ければトレーニング持続時間は長くなり、トレーニング強度を上げていけばトレーニング持続時間は短くなります。

 

この二つの関係によって、トレーニング効果(trainig effect)が決まってきます。

 

 

 

FTP向上を狙っているので、強度がFTPに近くなるにつれ、トレーニングの効果は上がっていきますが、その分体へのストレスも強く、運動を継続させる時間が短くなります。持久力を上げるためには出来るだけ高い強度で、長い時間トレーニングを行うのが理想的なのですが、その一回のトレーニングの向上効果を狙って強度を上げた結果、疲労が溜まり翌日、翌々日と満足にトレーニングできなければ、持久力を上げる要素である長時間、つまりボリュームを稼げなくなってしまいます。

 

 

 

 

そこで、FTP付近から急激に疲労が溜まり始めるので、その少し手前の強度でトレーニングすれば、疲労を最小限に抑えてボリュームを稼ぐことが出来、かつトレーニング効果を狙えるというところが丸で囲われているスウィートスポット。文字通り美味しいゾーンです。

 

 

 

このゾーンはFTPの向上を狙える強度でありながら、ボリュームを稼ぎやすく疲労も残しにくいのでベース期の有酸素能力を底上げしてくのにぴったりのトレーニングなのです。

 

 

 

勘違いしてはいけないのが、このゾーン以外がトレーニング効果がないわけではありません。

 

最初の方でも話している通り、Z2あたりのトレーニングは強度が低いのでトレーニング時間を長くとることが出来、脂肪分解能力が向上しやすいゾーンになります。

 

またFTPを超えたZ5は最大心拍数に近い強度になり、ストレスもかなりかかり疲労回復には十分注意を払わなければいけませんが、心肺機能を大きく向上させる効果もありますし、筋へのストレスもかけることができます。

 

また、高いパワーの出し方を体が覚えることもできます。現在のFTPの限界を超えていくのが目標なので、時にはこのゾーンでのトレーニングも必要になってきます。

 

トレーニングは何を狙っているのか、そのためにはどのようなトレーニングが必要なのか、そしてどういう組み合わせで行っていけばいいのかというのを考えていく必要があるのです。

 

 

 

 

トライアスリートはバイクだけでなく、スイム、ランニングと3種目のトレーニングを行わなければいけません。

 

自分にどのような能力が必要で、そのためにはどのようなトレーニングが必要か、しっかり見極めてトレーニングを積んでいきましょう!

 

 

 

以下に具体的なSSTインターバルの方法を載せています。平日に1回、そして週末に2~3時間のバイクライド(出来るだけ速い)をコンスタントに行えるようになると、いいコンディションを作っていけると思いますよ!

具体的なトレーニングの方法(メニュー)

SSTインターバル
 
  • W-UP  15-20分 Z1-Z3

楽なギアから始めましょう。楽に感じてきたらギアを上げるか、2~3分毎に負荷を上げていきましょう。

  • Main Set SSTインターバル 10分×3 Rest 5分 Z3-Z4

スウィートスポットでのインターバルです。少し低めのパワーからスタートするくらいの気持ちで、リラックスしたペダリングを心がけましょう。ケイデンスはパワーを維持するのに楽な回転数を見つけて行いましょう。

 

  • Main Set2(オプション) テンポ走 15-45分 Z3

時間がありボリュームを稼ぎたいときはメインセットにプラスしてテンポ走を行いましょう。できるだけZ3を維持して、レースフォームで行うようにしましょう。

5分毎にケイデンスを変える等すれば、ペダリング技術の改善と共に飽きずにトレーニングを行えます。

 

  • Down 10分 Z1

身体が楽に感じるまで低い強度で足を回しましょう。

 

 

 

ベーシックなSSTインターバルメニューです。

 

メインセットは10分3セットになっていますが、レベルに応じて時間やセット数を増減させましょう。

 

 

例えばシーズン初期でまだ体がトレーニングに慣れていないときは10分2セットや、8分2~3セットから始めていくといいと思います。

 

 

慣れてきたら徐々に時間を伸ばし、15分2セット、15分3セット、20分2セットというように徐々にインターバルの時間を伸ばしていくと、数値上の負荷(TSS)は同じでもよりトレーニング効果は高くなります。



オンラインでのコーチングも行っています。

 

各個人のスケジュールや目標、レベルに合わせたトレーニングスケジュール、トレーニングメニューを作成することで、効率のいいトレーニングを行うことが出来ます。

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